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あばたもえくぼ

日本中を混乱の渦に飲み込んだ「男女シャッフル災害」……あの日から、もう一年が経とうとしている。
あの日、あたしは付き合っていた彼氏の身体に魂が入ってしまった。以前のあたしであれば、何を言ってるの、と一笑に付していたと思う。
でも、災害後は研究が進み、魂が他の身体に入ってしまう現象がある一定の条件下で稀に起こりうる現象であることは日本の、いや世界の常識となっていた。

今回の現象は本当に突然起こった。
あたしはその時会社のOLとして働いていたのだが、目の前が一瞬だけふっと暗くなったかと思うと、気づけばオフィスにいた。それも、彼氏の席に座っていた。当時彼氏と付き合っていたことは社内に黙っていたので、とても焦って思わず立ち上がってしまった。でも、なんとなく見下ろすデスクの位置が高い。いや、身長が高くなってる?
思わず、今日そんなに高いヒールの靴を履いてきたっけ、と足元を見ると、あたしは自分がスーツを着て男が履くような革靴を履いているのに気づいた。
「どうして……えっ!?」声を出そうとすれば低い声しか出ず、何度も咳払いをした。同じように咳払いをする声があちこちから聞こえた。

その後のことは日本中が知っている。テレビをつけると無精髭を生やしたテレビ局のAD風の男が眉をひそめ、深刻そうな顔で足を揃えて倒し、いわゆる「アナウンサー座り」をしながら原稿を読み上げていた。後で聞いたところではそれは「元」某局の美人で有名なアナウンサーだったそうだ。

原因は不明であるがどうやら、都内で男女が他の異性の身体に入っている状態にあるのではないか、とその男が言うと、やだ、嘘ぉ、とあちこちで悲鳴のような野太い声が挙がった。
政府も当初機能しなかったが比較的対応は早く、夫人の身体になってしまった総理が非常事態宣言を出し、事態の収拾に向けて全力を尽くすことを発表した。

分かってきたことはいくつかある。
まず、今回の災害は、男は女の、女は男の身体に入る形で起こっているということだ。
また、もともと知り合いではない人間の身体に入ることはなく、全て知り合いの異性の身体に入っているということ。
そして、これはAさんとBさんの身体が「入れ替わる」のではなく、AさんがBさんに、BさんがCさんに、Cさんはまた別の誰かに、というような「魂のシャッフル」によって起こっているということ。
そしてこの現象が日本全土に広がっていることだ。

「なにぼーっとしてるの、結衣」
あたしの肩を短髪の長身の男が軽く叩いた。
「ああ、美優」
「もしかして、あの日のこととか考えてた?」
「なんで分かるの?」
「そりゃそーよ。あたしと結衣、何年付き合ってると思ってるの」

女言葉で話す男、というのが違和感があるかもしれないが、今の日本ではかなり普通のことになってしまった。今の世の中、「男はこう」「女はこう」という決まった価値観はほとんど存在しない。そういうあたしも彼氏の身体になってからも女言葉で話しているし、元男──いまの世の中では「女」と呼ぶのだが、いまの女もかつての男言葉を話す人が多いのではないだろうか。でも、女言葉で喋っている女もいる。かつての男言葉、女言葉なんていう価値観は今は消滅してしまったような気がする。

美優、と呼ばれた男は、「連れションしようよ」とにっこり笑った。

「あ、結衣、またおちんちん大きくなったんじゃないの?」
「ちょっと、覗き込まないでよ……」

男同士もこんな会話していたのだろうか?そうは思えないけど、男になって良かったかなと思うことの一つが立って用を足せることだ。

美優がいたずらっぽい目をして言う。

「もしかしてさあ、『彼女』に揉んでもらってるから大きくなってるとか?」
「え、女の胸じゃあるまいし、そんな事ってあるのかなあ」
「わかんなーい。大体、あたしたち女だった頃、別に彼氏に揉んでもらっても大きくなったりしなかったでしょ」
「もう美優、変な冗談やめて」
「あはは。でももう男の身体にも慣れてきたよね」

美優は快活に笑うと、アソコをプルプルと振ってそのままズボンのチャックを上げた。たしかに、馴染んでいる。あたしはそこまで豪快になれず、小便器の横に設置されているトイレットペーパーを小さく切ってアソコの先端を綺麗に拭き、専用のゴミ箱に捨てた。昔はこういったトイレットペーパーはなく、男はみんないまの美優のようにしていたそうなのだが、今の男性はそれがどうしても嫌という人も多く、設置されたのだという。

「でもさ結衣、リアルな話、男の方がいいと思わない?」
「えっ、そう?」
「だってさ、男の身体って力あるし。それに、今の雑誌のグラビアとかさあ、みんな本当に前男だったの?ってぐらい笑顔もエロ可愛く作っててさ、男に超媚びてんじゃん。この子たちも前はオッサンだったんだよね、とか思って。あたし見ただけでマジで興奮してさ、フルボッキしちゃうよ」
「ちょっと美優!」
「いいじゃん、誰もどうせ聞いてないよ。女だった頃はなんで男ってああなんだろって思ってたけど、今は男の気持ちわかるよね。ま、もう男だから当たり前なんだけど」

そういうと頭をかきながら、美優はあはは、と笑う。
美優、あんたは良いよね。美優は今や、会社でも一番イケメンと言われていた男の身体になっている。そんなに好きでもなかった前の彼氏(親戚の女子●学生になってしまったらしい)とあっさり別れて、自分に尽くしてくれる女の子──もちろん、元は男だけど──を見つけて付き合って。全てが順調じゃん。

「結衣、今度男子会しようよ。彼女のこととか聞きたいし。だってさ、唯香のいまの彼女って……」
「その話はもういいって」

あたしは美優の言葉を遮る。わかってる。美優はあたしのことを心配してくれてる。

「結衣」
「美優、あたしは今の生活で満足してるよ。この前も言ったじゃん」
「でも」
「わかってる……心配してくれてありがとう。でもね、もう少しだけ時間が欲しいかも」

あの日以来、この国の人たちは自分の生活を守ることで精一杯だ。美優のように全てがうまくいっている男に、あたしの心配をされること自体が少し腹立たしかった。
それに、あたしの今の生活はとても人に語れるようなものではないような気がする。

人の心なんて、結局身体的なものだったんだ、と思う。今のあたしにはそれが痛いほどわかる。



あたしはマンションのドアをばたん、と閉めて中に入る。

「あ、おかえり……」

と言ってにっこり笑う美優。いや、違う。美優はさっきまで会社で話していた男だ。美優に見えるこの女の子は、あたしの彼氏だった男──康介だ。康介はいまや、あたしの友人の美優の身体に入っていた。

この笑い方はあたしが調教した。美優にそっくりになるように、笑い方、振る舞い方、表情、口調、メイク、全てを教え込んだのだ。最初は嫌がっていた康介だったが、「言うことを聞かないならもう別れる」と言ったらしぶしぶ従った。それからというもの、康介はあたしといるほとんどの時間を美優を演じて過ごしている。

美優が康介のことを好きだったと言うことは、実は薄々知っていた。
でも、知らないふりをしていた。わざわざ女同士の貴重な友情を壊すほど、お互いバカじゃなかった。
今や、あたしは康介になった。康介は美優になった。

「気持ちは身体に引っ張られる」──そんなことがあの日以降、よく分かってきた。康介になったあたしは、美優になった康介に対して恋愛感情がない。確かに美優は美人だ。そして、中に入っているのはあんなに好きだったはずの康介だ。でも、「愛しい」という気持ちは、あたしの場合は、残念だけど全く感じなかった。

「ねぇ結衣、今日はどうするの」

康介が美優の声帯を使って、発情期のメス猫みたいな甘ったるい声を出す。康介はあたしのことがまだ好きなのだ。でもそれは、康介の元の感情とは別の感情なのだろう。
康介は美優の身体に入り、美優の気持ちに引っ張られているだけだ。
美優は康介のことが好きだった。今の康介が今のあたしに抱いている恋愛感情は、かつて美優が康介に感じていたものなのだ。

「とりあえず、着替えていい?」

と、あたしは言った。美優の顔をした康介は頷く。あたしはクローゼットから、あたしが選んでおいた「スカート」や「ブラウス」、それに「女の子の下着」を取り出し、おもむろに着始める。手際よくストッキングを、すっかり男っぽくなってしまった脚にスルスルと穿く。軽くメイクをする。そして昔のあたしみたいな髪型のウィッグを被る。
そう、あたしはこうして、女に戻る。「女装」をしている間だけは、自分を取り戻すことができるように感じていた。結衣でいられるような気がした。

「どう?あたし可愛い?」
「う、うん!元の結衣みたいな感じでかわいいよ」
「……やめてよ、そういう見え透いたお世辞」
「ほ、本当だってば!」

康介の身体になってからというもの、女装するために筋力をなるべく落とすようにはしているが、元々水泳部だった康介が鍛えていた身体だ。体格が全然違うのだからそんなに簡単にあたしみたいになるわけがない。

それにしても。
彼氏は元の自分の身体をあたしに使われ、こんな風に化粧して女装されて何を思っているのだろう?

「結衣……」
「なに?美優」
「こ、今度さ、女子会しよう。あたし彼氏のこととか知りたいし」

あはは、とあたしは笑った。そうきたか。

「それさ、今日本物の美優も同じようなこと言ってたわ。もうだいぶ本物の美優に近づいてきたんじゃない?」
「ほ、ほんと?うれしい……あれ、うれしいはずなのに、なんであたし泣いてんだろ?おかしいな」

康介は泣きじゃくっていた。元の美優は気が強くて、こういう風にメソメソしたりしない。あたしはいつも励まされる側だった。それが今は、中身が男だったとは考えられないぐらい、女の子だ。

「美優」の姿をしたそれは、泣きじゃくりながら言った。

「あたし……俺、なんかどんどん気持ちが女の子になってるみたいで……結衣、俺どうしたらいいのかな?でも結衣のことはまだ変わらず好きなんだよ、なあ結衣」
「『美優』、口調。男みたいだよ。本当にもう来るのやめるよ」

脅しではなく本気だった。男口調で話す「美優」には用はなかった。

「……ごめんなさい、ごめんなさい。あたしは美優です、ずっと唯香の友達でいたいの、友達でいいから」

泣きながらあたしの腕にすがる康介を見ながら、女装したあたしはガチガチにボッキしていた。いつも強気だった「美優」を泣かせているという倒錯した征服感があたしを支配していた。
ねえ康介、男って女の子にどうしてもムラムラしちゃうんだね。たとえそんなに好きじゃなくても。

いつしかあたしの股間の膨らみは、スカート越しでも充分わかるぐらいになっていた。康介は泣き止み、その膨らみをじっと物欲しそうに見つめる。
あたしは無言でスカートをめくり、せっかく穿いたストッキングを下ろす。今のあたしにはあまりにも窮屈になってしまったショーツを下ろして勃起したアレを露出させる。

「ほら、舐めていいよ」

美優の身体の彼氏にあたしのチ◯ポを咥えさせ、舐めさせる。康介は涙を軽く手でぬぐうと、ひざまずき、嬉しそうに赤い舌をチロチロと出しながら舐めはじめる。

挿し絵1

「あっ……それ、気持ちいい……よくあんた、元男なのに自分のち◯ぽそんなに美味しそうに舐められるよね」

かつてあたしの彼氏だったものは上目遣いであたしを見上げて、目線を細めて媚びた笑いを向ける。だって、結衣のこと、好きだから。その目はそう言っているように見えた。
康介、それはあなたの元の感情じゃなく、美優のあなた自身に対する感情なのよ、と言いたいのをいつも堪える。

じゅぽっ、じゅぽっ、という湿った音が部屋に響く。元自分の身体だけあって、康介はあたしの身体のどこが気持ちいいか全部知り尽くした動きをしている。あたしはこの時ばかりは、スカートを持ち上げながら感じるしかない。

「あっ、もういきそう……」

あたしがそう言うと、康介は一瞬少し怯えたような目をして、反射的に口をあたしのチ◯ポから外してしまう。あたしはそのまま、精液をドクドクと美優の顔じゅうにぶちまけた。

「あーあ、何やってんの?いつもちゃんとごっくんしろって言ってるでしょ」
「ご、ごめんなさい……まだあたし慣れなくて」

流石に元自分の精子を口に入れるのに抵抗があるのだろうか。でも、顔にぶちまけられるのもそれはそれで屈辱だとあたしは思うけど。

あたしは近くにあったティッシュで軽く先端を拭き取ると、メイクを落とし、再び着ていたスーツに着替えはじめた。

「結衣、今日は挿れてくれないの?」
「あー、今日は疲れたから」
「……うん」

あんたも元男だったらわかるでしょ。男は射精したら好きでもない女のことなんてどうでも良くなっちゃうって。
きっと康介は欲求不満で、あたしのことを思いながら美優の身体を使ってオナニーでもするのだろう。そしてどんどん美優に染まっていく。

「ま、また来てね、絶対……今度はあたし、もっとうまくやるから。もっと美優らしく……あたしらしく振舞うから」
「わかってる、愛してるよ」

と言って額にキスすると、康介はぱあっと美優の顔を明るくする。
こうしておけば、まあ大丈夫だ。もちろん、愛してるなんて真っ赤な嘘だけど。康介自身もきっと、気づいていて騙されたフリをしてる。

「また、あたしのところに戻って来て欲しいの!あたしずっと待ってるから!結衣、愛してるの!」

気が向いたらね、とあたしは答える。
あたしはあたしの家に帰ることにした。



家に帰ると「あたし」が先に帰っている。今日もまた元のあたしなら着なかったような、エッチな下着だけを着ている。

「結衣ちゃんおかえり。さみしかったよお、なんつって」

あたしの顔をニヤニヤと歪めながら、そいつは言う。

「結衣ちゃん、この下着さぁ、似合うだろ?こういうのもそそるだろ?結衣ちゃん、なに着ても似合うよな、エッチな身体になれて俺も嬉しいよ、結衣ちゃんになれてから毎日楽しいよ、うひひ」

あたしの身体には、職場であたしが最も嫌悪していた上司のシモザワが入っていた。
下品なことばかり言うので職場でも嫌われていた男で、あの年で結婚もしていなかった。

シモザワがあたしの身体に入っている──その事を知った時は、発狂しそうなほどショックだった。でも、実際会ってみたら、愛おしいと言う気持ちが溢れてしまった。彼氏の康介が、あたしのことを愛していた結果だ。身体に引っ張られて、中身がシモザワだと頭では分かっているのに、あの日、最初にあたしの顔を見たとき、反射的に思わず抱きしめてしまったほどだ。

「今日もおれ、結衣ちゃんの性感帯開発してたよ」

ニヤニヤとあたしの姿をしたシモザワが言う。愛おしいのがくやしい。中身は元々あんなに嫌悪していたあのオッサンだって分かっているのに、この康介の身体があたしのことを好きすぎて、興奮してしまう。
シモザワもシモザワで、あたしの体になってからと言うもの、康介の身体になったあたしを見るとどうしようもなく胸がキュンキュンしてくるらしい。

「結衣ちゃんには会社でエッチなこと言ってからかってれば十分だったんだけどさ、なんでだろう、今は結衣ちゃんのことひとりじめしたいっていう気持ちが湧いてきちゃうんだよ、あふっ、やわらけー、気持ちいい」

シモザワはあたしの胸を揉みながら言う。

「今日も結衣ちゃんのち◯ぽ挿れられるのを想像しながら何度もイっちゃったよ、ふふふ」

外見上は元のカップルのように見えるあたしたちだが、彼氏の康介の方に入っているのはあたしで、あたしの体にはあたしがあれほど毛嫌いしていた50代のオッサンがはいっているのだ。それでも、感情面では悔しいけど好きと言う気持ちをおさえきれなかった。

笑いながらシモザワはあたしの身体でポーズをとって放屁した。あたりに音が響く。

「あっ、くせっ!うひひ」

あたしの姿でそんなことをしないでほしい、と理性はあたしに訴えかける。その一方で感情は「飾らない君も可愛くて素敵」と押さえつける。恋は盲目とはよく言ったものだ。

「オナラもくせぇし、結衣ちゃんでもウ●コはするんだよなあ。はじめて結衣ちゃんの身体でウ●コした時のこと今でも思い出すよ、1時間は結衣ちゃんのウ●コの臭い嗅いでたもん俺、けつ拭くのも忘れてさ!ギャハハ!」

何回めかのシモザワの同じネタ。よほど嬉しかったのだろう。それを聞き流しながらあたしは、「あたし」のエロい下着に包まれた身体を見て興奮していた。

「なんだぁ、もしかしてもうしたいのか?いやぁ、モテる女はつらいねぇ、うっふん」

シモザワはクネクネしながら言う。姿かたちは完璧な女の子なのに、まるで女のフリをした男みたいだ。

「まあ、俺ももうおまんこ濡れ濡れだからさ、シャワーもいいよな、早くやろうぜ」

アイツはあたしの顔で下卑た笑いを浮かべた。当たり前だが元のシモザワと同じような笑い方で、あたしはその笑い方が心底生理的に嫌いだったのだが、今ではそれすら愛おしく感じてしまう。あばたもえくぼ、とはよく言ったものだ。



ベッドに直行する。康介とあたしが、何回もいっしょに寝たベッド。そこで康介になったあたしと、あたしになったシモザワは、この一年で数え切れないほどセックスしていた。

無言であたしは元自分の身体を押さえつけながら突き上げた。身体の相性も抜群にいい。美優と違って。それは本当に腹立たしい。

「あんっ!今日溜まってるんか?激しいわ、嫌いじゃないけどな、ひぃ、ひぃっ」

あたしの身体を火照らせながら、目を潤ませ快感に溺れながら、俺をもっとめちゃめちゃにしてくれぇ、もっと突いてくれえ、などとよがっている。

挿し絵2

あたしは目の前の女にさらに快感を与え続ける。この女の子のことが愛おしくて仕方ない。守りたい。そんな感情が身体の奥底から湧き出てきて、あたしは心底、あたしのことを好きだった康介のことを恨む。

「あっ、あっ、あっ、やだ、結衣イっちゃう、イっちゃうのおお !!」

シモザワは、絶頂の時だけ女言葉になる。
あたしの身体がそうするとより興奮するのを知ってるからだ。
あんたは結衣じゃないでしょ。あたしが結衣なのに。頭ではそう思うが、康介の身体は反応してしまう。あたしの膣内であたしはペニスをもっと固くさせた。あたしの膣がきゅうっ、と締まって、ぴくぴくと身体全体が震える。

「ひぃ、ひぃ、イったぁ〜!」

プシャアァとあたしの身体はお漏らしする。これも毎回のことだ。元のあたしだったらこんな事絶対しないのに、いつも「結衣ちゃんの身体、イったあとコントロール効かなくなっちゃうんだよ」とか言われる。そんなこと絶対ないのに。

はあ、はあ、と荒い息をつきながら、あたしの姿をした中年男が全裸で仰向けになる。
ふわっ、とあたしの汗のにおいがする。

ああ、本当にこのにおいは好きだ。あたしって、こんなに良いにおいだったなんて、女の時は感じなかった。康介の身体になったあたしが、康介の鼻腔で感じるあたしのにおいが特別なのだろう、と思う。
身体の生理的な幸福感には抗えない。そのにおいを発しているあたしの中身が中年男だとしても。

あの日以来、あたしたちの生活は、社会は、ずいぶんと変わってしまった。

あたしの顔をした変態中年男。あたしの大嫌いだった上司。それが今や、女になって、目を潤ませ、ニヤニヤと楽しそうに笑いながらであたしに話しかける。

「結衣ちゃん、子供作ろうね、俺、ちゃんと産むからさ、うひひ。結衣ちゃんの身体で、結衣ちゃんの子宮で、結衣ちゃんのザーメンを中に思いっきりぶちまけられてさ、結衣ちゃんの子供を産むからさ。だからもう一戦しようよ、俺のまんこにもっと結衣ちゃんのザーメン注いでよぉ」

あたしはまた自分が勃起するのを感じながら、愛おしさと憎らしさであたしを強く抱きしめた。

(文:皆月ななな)
(イラスト:野苺さくらさん)

こちらの作品は皆月ななな支援所 投げ銭プラン限定企画「投げ銭プランの方限定でSSリクエストを募集します」により飛龍さんのリクエストを頂き作成しました。
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幼なじみ

「おーい、朝だぞー」
亜子が今日もやってきた。
俺の幼なじみ。幼稚園からずっと同じクラスだ。
だが、俺はもうずっと高校に行ってない。

「いや、俺はもう、学校行く気ないから……ほっといてくれよ」
「ええっ、でも、学校楽しいよ?きっと行ったら楽しくなってくるよ」
心の底から心配した様子で亜子が言う。

ベッドに横になりながら、俺はほとんどその話を聞かずに亜子のことをぼーっと見ていた。
幼稚園の頃から見ていた亜子。
今もどこか幼い顔をしているが、高校の制服に包まれたその身体は幼稚園の頃とは違うのだと主張しているようだ。
特にその、ブレザーの上からでもわかる、胸が……。

「ちょっと!聞いてるの?」
亜子が怒ったように言う。

「うるさいなあ、そんなに言うなら亜子が俺の代わりに行けばいいだろ!」
その言葉を聞いて、亜子が不敵な笑みを浮かべる。

「ふっふ~ん。そう言うと思ってね。今日は私の能力を見せたいと思います!」

「えっ?」

と、思っている間に視界がぐるん、と回る。
ジェットコースターみたいに、一回転。

気づくと俺は、俺を見ていた。
「えっ?えっ、何が、って、げほげほ!んんっ!」
なんか声が上ずって高くなってる。

「えっ!?な、なんか手が小さい!」
「何で俺が女子の制服着てるの?」
「俺の胸が!」
「なんでスカート……って下着まで!」
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「な、ない!ないーーー!」

視界の中の俺は俺が慌てる様子を楽しそうに眺めていた。

「ふふーん、身体を入れ替えてみました」
「お前、もしかして亜子か?ってことは、これは……」
「そう!私の身体です!!」
この上ないドヤ顔で答える俺。俺ってこんな顔できたのか。

「これ元に戻るのか?」
「戻しません!」
「戻しませんって、お前……」
「さっき言ったでしょ」
「え、な、何を……?」

「私が代わりに学校に行きます!!」

---

というわけで、亜子が代わりに学校に行ったわけだが。
まさか、あんなことになるなんて。

帰宅中に、道路に飛び出した1学年下の少年を助けようとした亜子――俺の身体はトラックにはねられてしまった。
即死だったそうだ。
その少年は、自殺するつもりだったらしい。皮肉なことで、その少年は助かったのだ。

俺との入れ替わりのことは誰にも言ってなかったらしく、俺は、亜子の身体で一生を過ごすことになってしまった。

5年後――

「ママ、行ってきまーす」
「亜子、気を付けて行ってくるのよ」
「大丈夫大丈夫!」

俺は、亜子のフリをして過ごしている。もう大学2年になった。
入れ替わった当初は戸惑いがちだった亜子のフリも最近は板についてきた。
今は自分が亜子だという気持ちで過ごすことができるようになってきた。
昔では考えられないぐらい、明るい女子大生を演じている。

あの頃は制服だったが、今では私服で学校に行っている。
亜子ならどんな服を選んだんだろうか。

「亜子、おはよう!」
「正樹、おはよう」
この大学生は、俺の身体の亜子が助けたあの男の子だ。
一つ年下なのだが、なぜ呼び捨てなのかというと、俺は正樹と付き合っているのだった。
あの事件があってからすぐ、正樹側からの猛烈なアタックがあって、思わずOKしてしまった。

俺としては、男と付き合うなんてごめんだったのだが、正樹だけは違った。
正樹といると、本来の自分に戻れるような不思議な感覚がするのだった。
「今日わたし、学校行きたくないよ~……」
普段誰にも見せない、俺の本来の姿。元気な亜子とは違う引きこもり体質の俺。

「何言ってんだよ亜子、学校楽しいよ?きっと行ったら楽しくなってくるよ」
心底心配した様子で、正樹がいう。
「ん?そのセリフ、どこかで聞いたことあるような……」
「え?あっはっは、気のせい気のせい。それよりさ、またお前の服、選んでやるから今日講義終わったら買い物行こうぜ」
「う、うん……」

正樹っていいやつなんだけど、講義の最中も、終わった後も、ずーっと俺と一緒にいるんだよなあ。
服も高校生の頃から全部選んでくれるから、正直楽なんだけど。
なんか監視されてるみたい?っていうか……
だいたい、何で女の服にそんなに詳しいんだよ?女装趣味でもあるのか?
それに、自殺しようとしてたと思えないぐらい、明るくて元気なんだけど。

聞きたいことはたくさんあったが、いつもごまかされてしまうのだ。
それに……

「なあ亜子、それで、今日の夜も……な!」
「うん、わかってる。本当に正樹、好きだよね」
「俺は亜子の気持ちいいとこなら全部わかるからな」
こう豪語する正樹、言うだけあってあっちの方がすごく上手いのだ。
それに、女の身体は男の時より格段に気持ちいい。
亜子には悪いけど、これだけは女になって本当に良かったと思っている。

「ああ、俺も男がこんなに気持ちいいなんて……っと、何でもない。今日も楽しみにしてるよ」
「う、うん!」
俺は、正樹に抱かれることを想像して、早速身体と股間が熱くなるのを感じていた。

---

F(えふ)さんが投稿されていたこちらを見つつストーリーを付けさせていただきました!

入れ替わりの指輪

「あ、あたし、清彦になってる……」野太い男の声が聞こえる。声に似合わず、喋り方が女のようで気持ち悪い。
とはいえ、その声は数分前まで俺のものだった声だ。

「ああ、本当に起こるんだな、こんなこと」鈴のなるような可愛らしい声で俺が答える。
「あーあー」
声を出すと耳が気持ちよくて、ついつい声を出したくなって、発声練習のようなことをしてしまう。それを怪訝な様子で俺の顔が見つめている。

本当に変な気分だが、他人が動かしている自分の顔を見ていることで、自分が他人―双葉になったことが実感できる。
「なあ、双葉」「えっ?」双葉と呼ばれた、俺―清彦の顔がこちらを見る。そんな他愛のないことをしながら、目の前の俺のカタチをしているものが、双葉なのであるということを、確認していく。
まさか、本当に入れ替わるなんて。

---

きっかけは今日、双葉が持ってきた指輪だ。
「ねえ、この指輪なんだけど……」双葉が差し出したのは、一見何の変哲もない銀色の指輪。
だが、ペアリングなのか、二つある。

「何?これ」
興味はあまりなかったが、聞いてみる。俺が興味あるのは双葉だけだ。
付き合って3か月。あどけない感じの唇。サラサラの髪。くりくりと可愛らしい瞳。それらのパーツが整った顔になっている。
しかも、身体も俺好みだった。今日は白いタートルネックのセーターを着ているから、胸が強調されている。今でも近づかれると、胸ばかり盗み見てしまって、双葉に怒られる。太ももも白くしなやかで、すらっと伸びて、美しい。全体的に柔らかそうで、バランスのとれた身体。

俺は早く双葉の身体をもっと見たい――簡単に言えばセックスしたかったのだが、セックスはおろか、キスすらまださせてもらっていない。本人が嫌がるのだ。そんな双葉と付き合えたこと自体が俺にとっては奇跡のようなものだったが、早くもっと二人の関係を進展させたいと思う俺にとって、双葉の言うことはなんでも興味をもって聞いてみたかったのだ。

「これね、『入れ替わりの指輪』なんだって。友達にもらったの」
「『入れ替わりの指輪』……?」
俺はあからさまに怪訝な顔をしていたのだろう。双葉は慌てたように言った。
「あ、でも、わたしも全然信じているわけじゃないんだけど」
ぱたぱたと手を振りながら答える。本当にかわいらしい。
「なんかね、これをお互いの指につけると、お互いの心が入れ替わるんだって」

そんなこと、あるわけないじゃないかと言いかけて俺は考え直した。まてよ。
ここで、俺が双葉のことを否定してしまえば、何も起こらないどころか、双葉を悲しませるだろう。
逆に、「入れ替わりの指輪」とやらに話を合わせて聞いてあげれば、双葉も喜んでくれるかもしれない。
実際にもし入れ替わったら……俺は、双葉の身体をもっと「よく知る」という千載一遇のチャンスを手に入れるわけだな。俺は絶対にありえない妄想をたくましくした。

「なるほど。面白そうじゃん。それを付けて、入れ替わってみようよ、俺たち」
「え、でも……」
自分から言い出しておいて、なぜか渋る双葉。どうせ入れ替わらないのだから、ごっこ遊びのようなものだというのに。
渋られると、ごっこ遊びとはいえ、俺もなんとかして乗り気にさせたくなってくる。
「俺、入れ替わって双葉の視点で色々見てみたいよ。双葉だって男の感覚、味わってみたら楽しいと思うしさ」

色々言ってなだめすかしていたら、ついに双葉が折れた。
「うーん、じゃあ、ちょっとだけだよ」
双葉はそう言いながら、とてつもなく嬉しそうな顔をしていた。
「どうした?」
そう俺が聞くと、また慌てたように双葉は答えた。
「えっ!?あ、違うの。これはその……清彦が、わたしの事にそんなに興味を持ってくれるのが嬉しくて」
そう言うと双葉は、恥ずかしいのか俺から顔をそむけた。
こういうところも、双葉の可愛いところだ。

---

そんなわけで、彼女の部屋に来て、指輪をお互いにつけることになったのだが、まさか本当に入れ替わるとは思ってなかった。
見下ろすと、二つの丘が俺の白いタートルネックの胸元を押し上げている。自分の下半身が胸に隠れてよく見えない。
ベージュのスカートから、普段の俺では考えられない、すべすべとした色白の足が伸びている。俺は思わず恥ずかしくなって目をそらすが、今、これは自分の脚なのだ。スカートの中で足をすり合わせると、普段味わえない、内ももと内ももがさらさらとこすれ合わさる奇妙な感覚がする。毛もないすべすべとした感覚だ。

夢にまで見た、双葉の身体。今、これは俺の身体なんだ。

「あ、あんまりじろじろ見ないで、私の身体」
オカマみたいな口調で俺の声が恥ずかしそうに響く。そうだった。双葉に見られてるんだった。
「そうは言うけどさ、気になるんだよ、双葉の身体。俺たち付き合ってるけど、キスもしたことないじゃん」
「それはそうだけど……」
男性恐怖症でもあるのか、頑なにキスを拒んでいた双葉は不満そうにしながら、チラチラと俺を盗み見る。
「ん?」
俺はある違和感を抱く。
俺になった双葉の目線が、俺の――つまり双葉の、目を見ていないような気がする。その目線の先にあるのは――

「自分の胸、そんなに気になるか?」
言い当てられて、俺になった双葉はハッとした様子で横を向く。
「べ、別に」
俺はニヤニヤした。なんだ、結局双葉も、興味あるんじゃん。

「双葉の胸なんだから、別に双葉が見てもいいんじゃないかなあ?」
そう言いながら俺は、わざとしなを作りながら、自分の脇をしめるようにして、胸を強調させる。
「ちょ、ちょっと!やめてよ!」
そう言いながら、双葉は俺の胸から目が離せなくなっている。
なんだか楽しくなってきた。

「そんなこと言って」
俺は双葉の声で囁きながら、俺は真っ赤になった双葉のそばにすすす、と這いよる。
そして耳元で言う。
「双葉、勃起してんじゃん」
「えっ」

俺の身体が正直なのか、双葉の精神がそうさせたのか、俺のアレはズボン越しからもわかるぐらいに股間を盛り上げていた。
「こ、これは……」
「双葉、興味あるだろ、正直になろうよ」

双葉がふと、俺の顔を見つめる。
俺の目は自分でもわかるぐらいに潤んでいて、顔は紅潮していて、いつもの双葉なら絶対に浮かべないであろうエロい表情を浮かべていたのだろう。
双葉の息が、近くでわかるぐらいに荒くなってくる。

「ねえ、しようよ」
双葉だったらこんな口調で言うだろうな、と思って、双葉のマネをして、鈴のなるような双葉の声で俺が言った。

その声が完全にトリガーになったようだった。
双葉の目が据わって、俺の顔に双葉の顔が近づき、そして、唇が重なる。

初めてのキス。男として双葉にキスできなかったのは残念だが、元に戻ったらこれまでより仲良くなってるはずだ。
ついに、俺は双葉の心理的な壁をクリアした。俺は内心ほくそ笑んだ。

それにしても。
女のキスって、本当に全身で感じるんだ……
思わず俺は目を閉じる。キスの快感を全身で感じたくて。そうか、女が目を閉じるのはこういうことだったんだ。

いちいち感動しながら、俺はちょっとした違和感を感じていた。
なぜ、双葉はこんなにキスが上手いんだ?
貪るように、双葉のぷっくりとした唇に、舌に、吸い付いてくる俺の唇。
あんなにキスを拒んでいた双葉。なんで自分から?
だが、そんな違和感は女としてのキスの気持ちよさに消し飛んでいた。もっともっと……

---

息ができないほど激しいキスのあと、ぷはっ、と唇を離して、俺の顔が言う。
「ねえ、もっと気持ちよくなろっか」

双葉が自分からこんな事を言うなんて。これも、俺の体に引っ張られてるんだろうな。
「うん」
雰囲気を崩して、この千載一遇のチャンスを逃してなるものか。俺は、大人しくそれに従った。

セーターを脱いで、露わになるブラジャーに包まれた俺の胸。思わず俺は自分の胸の谷間に目が釘付けになる。
思ったよりも、大きい。あ、こんなところに、ほくろがあるんだな。

双葉に「あんまりジロジロ見ないでよ」と言われそうな気がして、俺は慌ててブラジャーを脱ぐ。
若干苦労したが、身体が覚えているのか、意外に簡単に脱ぐことができた。
ふるん、という擬音が出そうなほど形の良い2つの乳房に、思わず「おお」と声をあげかける。
ハタから見ると可愛い女の子が見慣れているはずの自分の胸に大興奮しているという異様な光景だ。

急に、双葉の身体が俺を押し倒す。
「……もう我慢できない」
双葉が荒い息でそんなことを言いながら、俺の胸を優しく触る。
数時間前まで俺のものであったごつごつした男の手が、今では俺のものになった女の乳首に触れる。
「ひゃうう」
自分から出た女の声に驚く暇もなく、双葉は俺の気持ちいいところを的確に攻めてくる。

俺は為すすべもなかった。
「あん……、ああん…」
自然に女みたいな嬌声が出ていた。
「その身体の気持ちいいところなら、全部わかってるんだから」
女の身体って、やばい。気持ちいい。
「あん!あああああん!」

---

俺は、あっという間に双葉にイかされてしまった。
初めて味わう女の身体の快感の余韻にボーっとしていると、いつの間にか全裸になっていた双葉が俺に言った。
「ねえ、今度は一緒に気持ちよくなろうよ」

ニヤニヤしながら言う双葉の表情はまるで男みたいで、直感的な違和感を感じた。
双葉の精神が入っている俺。その下半身が露わになっている。股間は勃起していた。

俺はなんとなく気恥ずかしさを感じたが、そんなこと双葉はお構いなしに俺の上に覆いかぶさった。
「ちょ、ちょっと待って、まだ心の準備が……」
「そんなもん関係ねえよ」
男のような口調で双葉はそう言うと、双葉はさっきの快感ですでにグチョグチョになった俺の中に、かつて俺のものであったモノを挿入した。

「ひっ」
ぬるんとした、男では絶対に感じられない「中に入ってくる」という感覚。
その初めての感覚で、下半身に力が入る。

「おお、いい締め付けしてくるねぇ」双葉が言う。
さっきから、何かがおかしい。双葉が、まるで男みたいに。何かおかしい……。

違和感が頭の中で実を結ぶまえに、双葉が俺の腰を掴み、ピストン運動を繰り返す。
「あっ、あっ、あんっ……」
繰り返し感じる感覚一つ一つが、男のときの射精よりも気持ちいい。
寄せては返す快感で、俺の頭は埋め尽くされてしまった。

「あん、あん、あん、あん」
ヤバい。これが続いたら、頭がおかしくなる。
快感で、俺の目は焦点を結べず、俺は目を閉じる。
潤んだ俺の瞳から、涙がつーっと自然に流れ落ちる。
女の身体。双葉の身体。
この身体の快感を、双葉はずっと感じていたんだ。

「あん、あん、あん、」
やばい、何かが。
「これ、イく……イッちゃうっ」
「俺もイくっ……!」
え、今双葉が「俺」って言った……?
快感の海に溺れながら、微かにそう思った気がしたが、その後にものすごい量の快感が押し寄せ、俺は気を失った。

---

「おい、そろそろ起きろ」
男の声で、俺は目が覚める。あれ……俺、どうなったんだっけ……?
股間がヌルヌルして、気持ち悪い。あれ、なんか変な、喪失感が。股間のモノがないような……
じわじわと、思い出してくる。そうだ、俺、双葉と入れ替わって。

「双葉……」
俺は双葉の名前を呼ぶ。

「双葉?双葉はお前だろ」
「え、何を言って」
「鏡見てくるか?お前は双葉。俺は清彦だろ」
「いや、そうじゃなくて、『入れ替わりの指輪』で……」
「はぁ?」
心底意味不明だと言う様子で俺の顔をした男が答える。

「え、だって、あれ、あれっ……?」
パニックになる俺を見ながら、「清彦」はしかめっ面を崩して吹き出す。
ああ、よかった。双葉はふざけて俺をからかっていただけだったんだ。
そう思った俺に、男は言った。

「お前、まだ俺の事を本当の双葉だと思ってたのか」
どういうことだ。俺は確かに、双葉と入れ替わって……だからこそ、俺は今双葉の身体でいるんじゃないのか。

二の句が継げなくなっている俺に、やれやれと言った様子で「そいつ」は言った。
「だからさ、最初からお前、俺に騙されてたんだよ」
「双葉じゃない……?お前、双葉をどこにやったんだ!」
「だから違うって。俺も前に、その『双葉』の身体の誰かに騙されてさ、その身体に入ってたわけ。お前がずっと『双葉』だと思ってたのは、俺だったんだよ」
「じゃあ、『入れ替わりの指輪』を友達に貰ったっていうのは」
「嘘に決まってるだろ」
「そんな……」
「この指輪で、誰かと入れ替わるチャンスを狙ってたんだよ。男の身体に戻れるチャンスをな。大変だったぜ、お前に怪しまれないように入れ替わりをしぶったフリをするのも」
俺は絶句する。俺が入れ替わりを説得したときの、双葉の嬉しそうな顔。
あれは、違う意味だった。「これでやっと男に戻れる」という意味だったのだ。
「双葉」の中身が元々男だったということが分かった今となっては、すべての行動に納得がいく。

「そんなの認められない!今すぐ俺を戻せ!」
「いやぁ、それが無理なんだわ。入れ替わった状態で一回元の身体とセックスすると、もう元には戻れないのよ。嘘だと思うならやってみてもいいけど」
おそらく、言ってることは本当なのだろう。俺はがっくりと肩を落とした。

「でも、お前多分、俺より女のセンスあるから大丈夫だよ」
双葉……いや、双葉ではなかった。その男は俺の顔でニヤッと笑った。
「俺は男とキスするのもごめんだと思ってたけどさ、お前、全然平気みたいだったし。セックスしてるときのお前、完全に女だったしな」
ぽんぽん、と呆然としている俺の頭を叩くと、清彦になった男は言った。
「まあ、その『入れ替わりの指輪』で適当な男を騙して、男に戻るのもよし。お前もよくわかってると思うけど、『双葉』は相当魅力的な女だから、よりどりみどりだよ。それとも」
ニヤリと笑う男。
「いつでも俺に連絡してこいよ。その身体の気持ちいいところは知り尽くしてるんだ」

---

かつての俺の身体が出ていった後、俺はベッドの上でへたり込んでいた。
これからは、俺が双葉。
夢にまでみた憧れの双葉の身体。魅力的で、なんとしてでも俺のものにしたいと思っていた身体。
その体は、文字通り「俺のものになった」。
これからはいつでも、見たい時に見られる。触りたい時に触れる。その触る手すら、双葉の手なのだが。
俺はそっと、自分の長い髪に右手をやる。細くて長い髪。ふんわりと、双葉のいい匂いがする。

俺はあいつに渡された、ペアの「入れ替わりの指輪」を見ながら、これからのことを考え始めた。

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皆月なななです。 TSF(男が女になっちゃう)小説を書いています! Twitterもよろしくね https://twitter.com/nanana_minaduki

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